篠先生の子育て講座の最中のできごとです。
2歳の二人が、おもちゃの取り合いをはじめました。
両者、ゆずりません。まったく手を放しません。
篠先生が、「がんばれ、がんばれ!」と声をかけました。
みんなで見守ります。
さあて、10分ぐらいかかるかな。
がんばれ、がんばれって、応援します。
10分は軽く超え、大声で叫びながらケンカが続きます。
少し二人の気をそらせてみようかと、大人たちは立って手遊びをしてみました。
でも、それにも誘われず、二人は必死でケンカ続行。
全力です。
そのおもちゃが誰のものだろうと、そんなことは知らない。
俺のものは俺のもの、お前の物は俺のものです。
小さな身体から、あふれてくる力
あきらめない。しがみつく。
二人のケンカで、感情をひきうけて泣き出す子。
なにか他のことをしかけようと働く子。
マイペースで知らぬ顔で遊ぶ子。
同じ空間に、いろいろな子がいて、
それを大人たちみんなで森の木になったかのように、観察していました。
戦いは長々と続き、見守る大人たちの懐も試されました。
ただ待ち、口を出さずに、ただ信じるだけです。
両者が泣き崩れたところで終わりがきました。
二人はお母さんに抱っこしてもらい、
よく頑張った、よく頑張ったと、背中を撫でてもらい、お水を飲みました。
ケンカしていた子も、傍で見て心震えていた子も、親たちも、
みんなみんな、胸にこみあげるものがありました。
「ただ感じる。ジャッチしない。感じるだけでいい」と、
篠先生のつぶやきに、みんながほっとして、涙がこぼれます。
お弁当を食べたら、二人はまた遊び出しました。
この世の終わりのような、激しいケンカをやりきって、
なんともなかったかのように、ケロリとして遊んでいます。
繊細な心でじっと座っていた子も、一緒に遊びました。
まだ言葉の少ない彼らの中には会話がなくて、
ただお互いの波長を感じあって遊んでいるようでした。
篠先生がいつも教えてくださいます。
「ケンカはできるだけ止めない。危ないことだけ教えてあげて。
大人が止めてしまうと、自分で仲直りする力も奪ってしまう。」と。
もめごとを恐れずにぶつかりあい、そのあとに、修復しあう。
そういうオトナになるためには、
子ども時代に、ケンカと仲直りの体験は大事ですね。
この先の人生、どうぞどうぞって、人に譲ってばかりだ。
「これは僕の!」と、譲らずに自己中心的でいられるのも数年。
子どもが全力をつくすおもちゃのとりあいに、
大人たちは、忘れかけていた何かを思い出すのでした。
(この学びの経験をシェアしたいとの願いに、お母さんたちもお子さんのお写真のわかちあいをOKしてくださいました。ありがとうございます。)
ここに集まったお母さんたちは、全員はじめましての間柄。
それでも、講座の場で篠先生がいたり、スタッフたちがいたからどっしりと、安心の場をつくれました。
きっと他の場では、ケンカを止めないといけないです。
難しいことだと思います。
大人同士で、初めましての間柄でも、「どうしましょう、見守ってみますか?」とやりとりできるようなチャンスがあったらいいですね。
